私たちが大切にしていること ~団体設立のきっかけとなったワールドキャンサーデーによせて
私たちが大切にしていること
~団体設立のきっかけとなったワールドキャンサーデーによせて
一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所は2018年に設立し、「アンコンシャスバイアスに気づこうとすることの大切さ」をお伝えしてきました。2013年以降、Googleが“Unconscious Bias@work”というトレーニングを全社的にはじめたことなどがきっかけとなり、ビジネスや教育の現場でも広く国内外で認知されるようになった「アンコンシャスバイアス」。現在では、様々な機関・団体・企業・講師などの啓発活動により、国内での認知も、少しずつ、広がってきているように思います。
こうした中で、「なぜ、アンコンシャスバイアス研究所を設立しようと思ったのか?」という創設の経緯をはじめ、「アンコンシャスバイアス」に関するご質問をいただくことが増えてきましたので、設立のきっかけとなった日「ワールドキャンサーデー(世界対がんデー)」によせて、ご質問にお答えするとともに、私たちが大切にしていることをお伝えしたいと思います。
1. アンコンシャスバイアス研究所の設立経緯
一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所は、2018年2月4日(ワールドキャンサーデー)に東京都千代田区で行われたイベント「LAVENDER RING DAY 2018」で、『がんに対するアンコンシャスバイアスに気づく』をテーマとしたワークショップをお届けしたことがきっかけとなり、設立した団体です。
「がんになったら、もうキャリアはのぞめないと無意識に思い込んでしまっていたことに気づけてよかった」という声をはじめ、ワークショップに参加された方々から様々な声を伺うなかで、アンコンシャスバイアスに気づくことで、救われる人がいるかもしれないと思うに至りました。アンコンシャスバイアスに気づくことで、モノの見方が変わり、可能性が広がるきっかけになればと願い、設立しました。こうした背景もあり、その後、2022年には、法政大学の松浦民恵教授との共同研究「がんと仕事に関する意識調査」を実施・公表しています。
アンコンシャスバイアスの影響は非常に多岐にわたるため、様々な文脈、テーマで、「気づいてよかった」を語るようになりましたが、ワールドキャンサーデーによせて、研究所を設立することとなった原点について、まずはあらためてお伝えさせていただきました。
今後も、私たちにできる取組みをすすめていきたいと思います。
2.「アンコンシャスバイアス」という用語の定義と日本語訳
1990年代以降の論文で、“Unconscious Bias”という用語を用いて「人種などによる職場における差別的待遇」や「誤った判断への影響」について述べられていることを確認していますが、その言葉の定義や解釈は、根拠としている先行研究や論文のテーマ、文脈により異なります。
2023年に発表された、“Unconscious Bias”に関する論文(300本をこえる論文に対するレビュー論文)においても、アンコンシャスバイアスという用語の解釈は様々であることが示されており、現段階で学術的な定義(一意に定まったもの)は確認されていません。
アンコンシャスバイアスに対する日本語での表記も、どのような文脈でこの用語をとらえるのかによって、様々な日本語意訳が使用されています。
(例:無意識の偏見/無意識の思い込み/無意識の偏り/無自覚の偏見等)
3.アンコンシャスバイアス研究所が採用している定義
本研究所は「アンコンシャスバイアス」を、次のように定義しています。
私たちは、何かを見たり、聞いたり、感じたりしたとき等に、「無意識に“こうだ”と思い込むこと」があります。これを、アンコンシャスバイアス(unconscious bias)といいます。日本語では、「無意識の思い込み」や、略して「アンコン」などとも表現されています。 |
この定義は、「ひとりひとりがイキイキとする社会をめざす」という研究所のミッションのもと、主に認知心理学や社会心理学の様々な先行研究をもとにしながら、特に以下5点を踏まえ、改変を重ねた結果、現在の表現に至っています。
- 相手に対する偏見や差別的な見方に限定しないこと
- 自分自身に対するアンコンシャスバイアスにも目をむけられること
- 特定の社会集団や属性に対することに限定しないこと
- ひとりひとりの可能性が広がるような行動変容につながること
- 子どもから大人まで、自分のこととしてとらえ、振り返ることのできる表現とすること
4.私たちが大切にしていること
本研究所は「アンコンシャスバイアスに気づくことで可能性が広がり、ひとりひとりがイキイキする社会をめざす」をミッションに、約200人の認定トレーナーの皆さまとともに、「アンコンシャスバイアスに気づこうとすることの大切さ」をお伝えしています。
「どうお伝えすれば行動変容につながるのか」を常に問いながら、様々な先行研究をもとに、研修プログラムを構築しています。お客様からいただく課題やお悩みを踏まえ、お伝えする内容をカスタマイズしつつ、受講後にいただく感想や気づきの声を、貴重なフィードバックとして受け止め、提示する事例や問いかけの言葉などを日々見直し、更新し続けています。
こうして、伝え手とお客様とで作り上げてきた私たちのプログラムは、「理論の先にある実践に基づくもの」であるとも言えると考えています。
今後も、皆様からいただく声を大切にしながら、「アンコンシャスバイアスに気づこうとすることの大切さ」をお伝えしていくとともに、ひとりでも多くの人が、ひと時でも多く「気づいてよかった」と思える未来をめざしていきたいと思います。
2025年2月4日
一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所
代表理事 守屋智敬